絞りとボケの関係
絞りとボケの関係を知る
写真の適正露出はシャッター速度と絞り値(F値)の関係で決まります.シャッター速度を遅くすれば,絞りを絞る(F値を大きくする)ことができますし,シャッター速度を早くすると絞りは開けなければいけません.
例えば「絞りF5.6・シャッター速度1/500」と,「絞りF32・シャッター速度1/15」では露出量は同じです.では得られる画像も同じか?というと・・・,これがまったく違ってきます.
シャッター速度を速くすると動く被写体をピタリと止めて写すことができる,というのは感覚的にも理解しやすいのですが,絞りを開けたり絞ったりすると「ボケ具合」が変わってくるのです.
絞り値によるボケ具合の違い
同じレンズで絞りをF5.6とF32にした場合でボケの度合いがどう違うかを見てみましょう.
F5.6の場合
F32の場合
F5.6では手前の花にのみピントが合っており背景は完全にボケていますが,F32では背景もしっかり写っている,つまりピントの合っている範囲が広いことがわかります.
この『ピントの合う範囲』のことを『被写界深度』といいます.ピントの合う範囲が狭い場合は「被写界深度が浅い」,ピントの合う範囲が広い場合は「被写界深度が深い」といいます.
被写界深度の特徴
被写界深度には次のような特徴があります.
- 絞りを絞れば絞るほど被写界深度は深くなる
- レンズが広角であるほど被写界深度は深くなる
- 合焦点の手前より,合焦点の奥側のほうがピントの合う範囲が広い
- 同じ絞り値でも撮影距離が長いほど被写界深度は深くなる
被写界深度の活用
画面全体にピントが合っているような写真(パンフォーカス)を撮りたければ,絞りを絞れば良いわけですが,ポートレイト(人物写真)などの場合,被写体を浮き立たせたいという場合もあります.こんなときは敢えて絞りを開放し,人物の瞳のみにピントを合わせるなどのテクニックが使われます.
また,風景写真の場合でも「画面に写し込みたくないもの」(例えば電柱とか電線とか)を排除するために絞りを開けることもあります.
また,デジタルの場合は関係ありませんが,被写界深度はプリントの際も重要です.プリント作業時には,引き伸ばしレンズを通して投影した画像を印画紙に焼き付けるのですが,このとき,フィルムと印画紙が完全に平行でなければ投影画像のピントにズレが生じます.そのため引き伸ばしレンズの絞りを調整し,画面全体にピントを合わせるというわけです.
ただ,撮影でもプリントでも,ピンボケを被写界深度でカバーするという考え方は良くありません.むやみに絞るとシャッター速度が遅くなり,ブレの原因になるのはもちろんのこと,絞りを絞りすぎると光の回折等による小絞りボケによって逆に画像が不鮮明となってしまうからです.
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