エベレスト登頂の謎と1台のカメラ
マロリーとベストポケットコダック
世界で最も高い山エベレスト.この世界最高峰の初登頂に成功したのはエドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイの2人です.それは1953年のことでした.
それより遡ること約30年前の1924年.この年ジョージ・マロリーというイギリスの登山家がエベレスト登頂に挑戦しています.「世界最高峰の初登頂」という名誉をかけて世界各国がしのぎを削る中,マロリーはイギリスの威信を背負ってエベレストに挑んだのでした.
この挑戦でマロリーは帰らぬ人となったのですが,実はここに大きな謎が残されています.
「そこに山があるから」(Because it is there.)という有名なこの言葉はマロリーによるものだとされています.そんなマロリーは実はエベレスト登頂に成功していたのでは?という謎がいまだに解決されずにいるのです.そしてその謎を解き明かす最も重要な鍵となるのが1台のカメラなのです.
マロリーはエベレスト挑戦の際にコダックの「ベストポケットコダックモデルB」というカメラを持ち込んでいます.もし登頂に成功したならば,絶対に山頂で写真を撮るはずです.ですのでこのカメラが発見されれば,マロリーが登頂していたかどうかが明らかになるはずなのです.
しかし,マロリーの遺体についてはかすかな目撃情報はあったものの,長年発見されずにいました.マロリーの遺体が発見されたのは彼が行方不明になってから実に75年後の1999年のことでした.マロリーの遺体発見は大きなニュースとなりました.しかし,肝心のベストポケットコダックモデルBについては彼の遺体周辺からは発見されませんでした.
また,マロリーはエベレスト挑戦の際「山頂に妻の写真を置く」と言ったとされていますが,遺体周辺からはその写真も見つかっていません.
マロリーの遺体は見つかったものの,カメラが見つからなかったことで結局登頂の謎は解明されるに至りませんでした.ちなみにマロリーの遺体は75年の年月を感じさせないほど保存状態が良いものでした.これはエベレストの酷寒な環境によるものです.
マロリーのカメラはいまだ発見されずにエベレストのどこかに眠っているかもしれません.そしてその中に入っているフィルムはエベレストの低温環境下でいまだに現像可能な状態で保存されているかもしれないのです.
ジョージ・マロリー (George Mallory) 1886-1924 イギリス |
ベストポケットコダックモデルB |
ちなみに,作家の夢枕獏氏がマロリーのカメラの謎を題材にした「神々の山嶺 」という小説を書かれています.興味のある方はぜひご一読を.
(谷口ジロー氏による漫画版もあります.エベレストへの挑戦が圧倒的スケールで緻密に表わされていてこちらも圧巻です)
カトマンドゥの裏街でカメラマン・深町は古いコダックを手に入れる。そのカメラはジョージ・マロリーがエヴェレスト初登頂に成功したかどうか、という登攀史上最大の謎を解く可能性を秘めていた。カメラの過去を追って、深町はその男と邂逅する。羽生丈二。伝説の孤高の単独登攀者。羽生がカトマンドゥで目指すものは?柴田錬三郎賞に輝いた山岳小説の新たなる古典。
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